ミツバチの重要性と輸入物流|食糧危機を救う小さなエンジニア

ミツバチは、単に「ハチミツを作る昆虫」という枠を超えた存在です。私たちの食卓や経済、そして地球全体の生態系を支える「自然界のエンジニア」とも呼べます。

今回のコラムでは、まずミツバチが持つ3つの重要な役割について解説します。さらに、日本国内の農業を支えるミツバチの輸入(物流)の実態にも迫ります。

1. 農業と食糧安全保障への貢献

ミツバチの最大の役割は「花粉媒介(ポリネーション)」です。私たちが日々口にする食材の多くは、彼らの働きなしには成立しません。

花粉を運ぶミツバチ
  • 世界の食糧の1/3:
    人類が食べる世界の主要な作物の約75%が、ミツバチなどの昆虫による受粉に依存しています。
  • 作物の多様性:
    対象は多岐にわたります。リンゴやメロンなどの果物、ナッツ類、そしてカボチャなどの野菜も同様です。もしミツバチがいなければ、収穫量が激減したり、形が悪くなったりする恐れがあります。
  • 家畜への影響:
    牛の飼料となる牧草(アルファルファ等)も、受粉をミツバチに頼っています。そのため、肉や乳製品の供給にも間接的に深く関わっているのです。

2. 巨大な経済的価値

ミツバチがもたらす経済効果は、人工的な受粉技術では代替不可能なほど巨大です。

世界的な試算
花粉媒介による経済的利益は、世界全体で年間最大約5,770億ドル(約60兆円〜80兆円)に上ると推定されています。
日本国内の価値
日本の農業においても、受粉媒介による経済価値は約4,700億円と算出されています。これは日本の農業生産の根幹を支える数字です。

3. 生態系の維持と生物多様性

ミツバチは、農業だけでなく野生植物の繁殖を助けることで、自然環境のバランスを保っています。

  • 食物連鎖の基盤:
    植物が実を結ぶことで、それを餌にする鳥や小動物が生き延びることができます。ミツバチが消えることは、これら全ての生き物の生存基盤を揺るがすことになります。
  • 環境のインジケーター:
    ミツバチは環境の変化に非常に敏感です。彼らの減少は、農薬汚染や気候変動といった環境悪化を知らせる重要なサインとなります。

現在、農薬の使用や気候変動などにより、ミツバチの数は世界的に減少傾向にあります。
彼らがいなくなれば、深刻な食糧危機や経済的損失を招くことになるでしょう。


【日本の物流事情】年間13トンのミツバチ輸入

ここからは、物流会社である日新ならではの視点で、ミツバチの「輸入事情」について解説します。

現在、日本国内におけるイチゴやメロンなどの受粉需要は非常に高まっています。
しかし、国内産だけでは供給が追いつかない時期があります。そのため、不足分を補う授粉用として、外国から「生きたミツバチ」が輸入されているのです。

🔍 ミツバチ輸入の統計データ

輸入できる国は家畜伝染病予防法によって厳しく制限されています。現在は主に、スロベニアやベルギー等から「セイヨウミツバチ」が輸入されています。

  • 年間輸入額:平均5億〜7億円
  • 年間輸入重量:約13トン(直近3年統計)

※ミツバチ1匹の重さは約0.1gですので、1kgあたり約1万匹です。つまり年間で億単位のハチが海を渡ってきています。

パッケージ蜂としての輸送

輸入形態は主に2種類です。繁殖用の「女王蜂」単体と、働き蜂とセットになった「パッケージ蜂」があります。
特に農家の受粉用としては、到着してすぐに働けるパッケージ蜂が重宝されています。

生きた昆虫の輸送には高度なノウハウが必要です。温度管理や換気、そして検疫手続きなど、一般的な貨物とは異なる対応が求められます。

🔗 関連コラム:
コールドチェーン物流と国際規格を用いた普及について
※ミツバチなどの生体輸送も、厳密な温度管理(コールドチェーン)の一種と言えます。

まとめ:私たちにできること

こうした状況を受け、世界中で「ネオニコチノイド系農薬」の規制が進んでいます。また、都市部での「蜜源植物(ミツバチの餌となる花)」の植樹も活発です。

私たち個人でもできることはあります。ベランダにハーブを植えたり、オーガニックな食品を応援したりすることです。
まずは身近なことから始めてみてはいかがでしょうか。

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