米国水産物輸出の「パスポート」——SIMP規制を読み解く
米国は世界最大級の水産物輸入国です。しかし、その市場への参入には高いハードルが存在します。それが「SIMP(水産物輸入監視プログラム)」です。これは強力なトレーサビリティ規制です。不法漁業や産地偽装を防ぐ目的があります。
対象の「優先種」には13の魚種群が指定されています。マグロ、カツオ、エビ、カニなどが含まれます。特に、日本からの輸出が多いのはマグロ・カツオ製品です。したがって、実務上は非常に多くの書類が求められます。
米国市場への「パスポート」:必須となるライセンスと書類
米国への水産物輸出には必須の要件があります。以下の書類やライセンスが「パスポート」の役割を果たします。
まず、米国の輸入者には前提条件があります。「国際漁業貿易許可(IFTP)」の保持が必須です。
そして、輸出の際に核心となるのが「NOAA Form 370」です。具体的には以下の要件を満たす必要があります。
NOAA Form 370への詳細記載
この書類には詳細な情報の記載が必要です。漁船名、旗国、漁具、漁獲エリアなどを明記します。さらに、漁獲航海の日付も必須項目です。
船長による保証陳述(Captain’s Statement)
併せて、漁船の船長による保証陳述も不可欠です。ここでは、イルカを意図的に殺傷していないことが誓約されます。さらに、船長の研修修了も条件となります。NOAA指定のコースを受講しなければなりません。
なお、生鮮のマグロはこのフォームの提出が免除されます。しかし、SIMP自体の記録保持義務は適用されるため注意が必要です。
ロシア産水産物に対する制裁と実務対応
また、昨今の国際情勢を受けた対応も必要です。ロシア産水産物に対する制裁は避けて通れません。
【規制対象】大統領令(EO 14114)
たとえば、大統領令による輸入禁止措置があります。ロシア産のサケやカニなどは米国へ輸入できません。さらに、第三国で加工された製品であっても規制の対象となります。
【実務対応】自己証明の提出
実務では、マグロ製品等でも証明書類が必要です。原料がロシアに由来しないことを示します。これを「自己証明」として作成・提出します。結果として、輸入者は確信を持って申告できます。そのため、これがスムーズな通関の鍵となります。
海洋哺乳類保護法(MMPA)の本格始動と情報伝達の重要性
さらに、2026年1月から新たな規制が本格始動しました。「海洋哺乳類保護法(MMPA)」に基づくものです。日本は原則として承認国リストに含まれています。ただし、特定の漁業や地域には注意が必要です。新たに「許容性証明書(COA)」が求められる可能性があります。なぜなら、混獲防止策の証明が必要だからです。米国の基準と同等であることを示さなければなりません。
米国向け輸出は、単なる「品質の良さ」だけでは通用しません。つまり、全行程の透明性が重要になります。漁獲から食卓に届くまでを文書化できるかが問われます。したがって、この「情報のバトン」を繋ぐことが必須です。サプライチェーン全体で管理を徹底します。そのため、これが米国市場でのビジネスを継続させる条件です。
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