「世界の食をみなさまのもとへ」
我々の食生活の中でもなじみがある中華料理。
かつて日本国内で食べられる本格中華といえば、その代表は広東料理で、田舎に住んでいた私が口にできる中華料理といえばいわゆる町中華くらいなものでした。
それがこの20年、中国国内の経済成長やインフラ整備も後押ししとなり中国内外の物流・人流量が一気に増加したことや、日本人の食の傾向の変化による辛味ブーム到来で、本場の四川麻婆豆腐や火鍋を気軽に楽しめるようになりました。
更にここ10年、今では魅力的な地方料理が多数食べられるようになったのをご存じですか?四川料理よりも唐辛子の辛さが際立つ湖南料理、珍しいキノコに出会える雲南料理、イタリアのパスタのように多様な麺が楽しめる山西料理、スパイスが癖になる新彊の羊の串焼き…。外食だけではなく、家庭の味である水餃子や季節を祝う湯圓(餡入り白玉団子)、屋台の小料理などが国内で手軽に購入できるようになったのも嬉しいことです。
これまで中国各地を訪れいろいろな郷土料理を味わってきた私ですが、中でも日本で再会して感動したのが少数民族のふるさとと言われる山岳地帯・貴州省の料理です。トムヤムクンにも似た発酵トマトと唐辛子ベースの酸っぱ辛い味付けが特徴の貴州料理はご飯やお酒とも抜群も相性!特に発酵食品は現在世界的に注目されており、日本でも若手の料理人や研究家を中心に食のコラボレーションが次々に展開されています。
しかし料理人の方々に話を聞くと、地方の特徴的な食材や調味料などは日本国内の食材では代用が難しいものもあり、輸入に頼る部分も多いとのこと。必要な食材や調味料などを仕入れてくれる業者さんがいてこそなのだと仰っていたのが印象的でした。
一方、現在貴州省の中心地・貴陽では、市内に30店を超える日本料理店が若者を中心に人気を博しています。味噌などの食材がスーパーに並び、私自身も街中で数多くの日本から輸入された商品の数々を目にしたときは驚きました。今でこそビッグデータの研究基地として大きな成長を遂げた貴州省ですが、ここはかつて中国で最も貧困な地域と言われた平均海抜1100メートルの山の中、街から出れば今もすぐそこに大自然が横たわり少数民族の村々が点在しているのです。そんな山岳地帯にも物流の網目はしっかり伸び、人々の食を、生活を支えています。
今、物流の発達と人々の往来が生む文化の交流によって、世界の食はますますボーダーレスになってきています。日新では、コロナ禍で旅ができなくても、日本の食を世界の皆さんの楽しみに、世界の食を日本の皆さんの笑顔に変えていきたいと考えています。(A.T. )