「私たちの食卓は大丈夫?日本の食料自給率を考える」
私たちが毎日食べているごはんやパン、野菜やお肉。それらが「どこで作られているか」を意識したことはありますか?
実は、日本の食料自給率は年々低下しており、2023年度のカロリーベースでは38%にとどまっています。これは、私たちの食卓に並ぶ食品の6割以上が海外からの輸入に頼っているということを意味します。この数字は、私たちが思う以上に、日本の食料事情が海外の動向に大きく左右される不安定な状態にあることを示唆しています。
食料自給率のピークはいつ?
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では、いつから自給率は下がり始めたのでしょうか?
**日本の食料自給率のピークは1965年度の73%**でした。当時は、米を主食とする伝統的な食生活が中心で、国内の農業生産が食卓を支えていました。しかし、その後、食生活の変化、貿易の自由化、そして農業の担い手不足といった複数の要因が絡み合い、食料自給率は長期的な低下傾向をたどることになります。
1970年代に入ると、経済成長とともに食生活が多様化し、米の消費が減少する一方で、肉類や油脂類の消費が増加しました。これらは、国内での生産だけでは賄いきれないため、輸入に頼る割合が増えていきました。さらに、1990年代からは40%台を割り込む年も出てきており、危機感が高まっています。
なぜ自給率の低下が問題なのか?
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なぜ、食料自給率が低いことが問題なのでしょうか?その理由は、私たちの生活に直接関わる様々なリスクを抱えることになるからです。
1. 安定供給のリスク
世界情勢の不安定化、戦争、天候不順、物流の混乱など、海外で何か問題が起きた場合、私たちの食卓に並ぶ食品が急に入手困難になったり、価格が急騰したりするリスクがあります。新型コロナウイルスのパンデミックでは、国際的な物流の停滞により、一部の食品がスーパーから消えるといった事態も起こりました。このような事態が、いつ、どこで起きてもおかしくないのが現状です。
2. 食の安全性のリスク
輸入食品は、輸送中の品質管理や、農薬・添加物の使用基準が日本と異なる場合があります。すべての輸入食品が危険というわけではありませんが、食の安全性を確保するためには、より厳格なチェック体制が求められます。国内で生産された食材は、日本の厳しい基準のもとで管理されているため、より安心して食べられるという利点があります。
3. 国内農業の衰退
安価な輸入品に市場を奪われることで、日本の農業は競争力を失い、農業従事者の減少や耕作放棄地の増加といった問題に直面しています。農業が衰退すれば、自給率を上げることも難しくなり、悪循環に陥ってしまいます。豊かな自然環境と食文化を次世代に引き継ぐためにも、国内農業を守り育てることは不可欠です。
私たちにできること
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「国の問題」と聞くと、あまりに大きすぎて自分には何もできないと感じるかもしれません。しかし、私たち一人ひとりの小さな行動が、日本の食料事情を良い方向に変える力を持っています。
• 「国産」の食材を選ぶ
スーパーや八百屋さんで買い物をする際、少しだけ産地を意識してみましょう。地元の野菜や、国産のお米、肉、魚を選ぶことで、地産地消を応援し、国内の農業・漁業を支えることにつながります。新鮮で美味しい食材が手に入るだけでなく、食の生産者と私たち消費者のつながりを感じることもできます。
• 家庭での食品ロス削減
日本では、まだ食べられる食品が大量に捨てられています。農林水産省の調査によると、日本では年間約523万トンの食品ロスが発生しており、これは国民一人あたり毎日お茶碗一杯分の食べ物を捨てている計算になります。食材を無駄なく使い切る、食べきれる分だけ買う、といった日々の心がけが、食料全体の無駄をなくし、結果的に自給率向上に貢献します。
• 日本の食文化を見直す
日本が誇る「和食」は、米や魚、野菜など、国内で生産可能な食材を多く用いています。米を主食とし、旬の野菜を取り入れた食生活は、食料自給率の向上にもつながります。
まとめ
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日本の食料自給率の低下は、私たちの食卓の安定性や安全性を脅かす、深刻な問題です。しかし、この問題は「他人事」ではなく、私たち一人ひとりの日々の選択が、未来の食を形作っています。今日の食事が、どこから来ているのか。そして、どのような選択をすれば、日本の未来の食卓を守れるのか。少しだけ意識してみませんか?その小さな一歩が、日本の農業を支え、将来の食の安心につながります。(H.H.)