「介護と食事について」

今回は介護と食事についてお伝えいたします。
高齢者介護の現場では、食事は単なる栄養補給にとどまらず、日々の生活の中での大きな楽しみであり、生きる力の源でもあります。
しかし、加齢とともに噛む力や飲み込む力が低下し、誤嚥や窒息のリスクが高まることから、介護の現場では「安全な食事」と「おいしい食事」の両立が課題となっています。

食事介助では、その人の咀嚼力や嚥下力、食の好みに合わせた個別対応が求められます。たとえば、普通のご飯が難しい方には軟飯やお粥を、噛む力が弱い方にはやわらかく煮た料理やミキサー食を提供します。汁物も専用の粉を混ぜ、とろみを出すことで誤嚥を防ぐ工夫をしています。ただ、形状を変えると見た目や味わいも変化しやすく、食欲を損なう原因にもなります。それにより、食が進まず、必要な栄養が十分にとれないこともあります。特にミキサー食は形状がなくなるため、見た目や食感から使用している食材の判別が難しくなってしまいます。そのため、不足した栄養に関しては栄養補助食品等を用いることも有効な方法の一つとなっています。

また、食事は「人と人をつなぐ時間」でもあります。一緒に食卓を囲むことで会話が生まれ、孤独感の軽減や認知機能の維持にもつながります。介護現場では、食事の時間をできるだけ楽しく、安心して過ごしてもらうために、明るい照明、心地よい音楽やラジオ、季節の花や装飾品などを飾り、リラックスできる空間を演出しています。老人ホームなど施設の外にでることが難しい入居者の方にとっては季節を感じることができる機会でもあるため、時にはクリスマスメニューや夏祭りの屋台をイメージした出店形式などをとることで閉鎖的になりやすい施設内でも季節を感じることが可能です。

食事を楽しむことができることは大きな喜びであり、人生の最期までその喜びを感じられることは、QOLの向上に直結します。一生の間で食事をとれる回数には限りがあるので、日々の中で食事は後回しにしてしまいがちですが、時には食事に意識を向け、ゆっくりと時間をかけて食事を味わうことも大切にしたいと思います。(M.T.)