知ってるようで知らない「船舶位置情報」と見えない海の戦い
中東情勢のニュースが連日トップで報じられています。
その際、無数の船が動く地図を見たことはありませんか。
「VesselFinder」などの船舶位置情報サービスです。
今や一般の方にも、すっかりおなじみのツールとなりました。
しかし、この便利なシステムには「裏の顔」が存在します。
絶対ではない?位置情報は「偽装」できる
あのアイコンの正体は「AIS(自動船舶識別装置)」です。
実は、このシステムから発信される情報は絶対ではありません。
なぜなら、人為的に電源を切ったり、データを偽装できるからです。
例えば、経済制裁逃れや密輸を行う「闇の船」が存在します。
彼らは追跡を逃れるため、意図的に別の座標を電波で発信します。
つまり、地図上にいるはずの船が、実際には存在しないのです。
これを専門用語で「AISスプーフィング(偽装)」と呼びます。
安全装置がミサイルの「照準」に変わる時
さらに深刻なのが、現在の中東情勢における軍事利用です。
AISは本来、船同士の衝突を防ぐための平和的な安全装置です。
しかし、自らの現在地を世界中に公開する機能が仇となっています。
なぜなら、武装勢力にミサイルやドローンの照準を与えてしまうからです。
事実、紅海周辺ではAIS情報を頼りに多くの商船が狙われています。
誰もが見られる便利さが、有事においては致命的な弱点となります。
究極のジレンマ:衝突の危険か、命の危険か
そのため、危険海域では多くの船がAISの電源を自ら切ります。
これを海運業界では「ゴーイング・ダーク(消灯)」と呼びます。
しかし、これには海難事故という別の巨大なリスクが伴います。
安全を守る装置を切らなければ、ミサイルで命を狙われてしまう。
したがって、現在の船乗りたちは究極のジレンマを抱えています。
ニュースの裏には、こうした知られざるドラマが隠れているのです。
