おせちの蒲鉾はなぜ高い?「1,000円の謎」と真夏の製造ラッシュ

年末の物流とおせち
年末特別コラム

おせちの蒲鉾はなぜ高い?
「1,000円の謎」と真夏の製造ラッシュ

さて、2025年も残すところあとわずかとなりました。
皆様、お正月の準備はお済みでしょうか?

ところで、スーパーの練り物売り場に行くと、驚くことはありませんか。
普段は100円前後で売られている蒲鉾(かまぼこ)が、年末になった途端、1,000円以上の「お正月価格」に跳ね上がっているあの現象です。

一見すると、「ただパッケージが豪華になっただけでは?」と思われがちかもしれません。
しかし、実は中身に明確な違いがあるのです。

🎍 お正月用蒲鉾、3つの違い

最大の違いは、やはり魚のランクと「つなぎ」の量にあります。

比較項目 いつもの蒲鉾 お正月用の蒲鉾
魚の種類 冷凍すり身
(スケトウダラ等)
生の鮮魚
(グチ、タイ等)
つなぎ
(デンプン)
多い
(カサ増しのため)
極少、または不使用
(魚本来の旨味)
板の素材 プラスチック等 モミの木
(調湿・防腐効果)

具体的には、普段の蒲鉾は冷凍すり身とデンプンを使用しています。
一方で、お正月用の高級品は「グチ」などの鮮魚を使い、デンプンをほとんど使いません。
その結果、魚本来の濃厚な旨味と、職人技による「足(あし)」と呼ばれる強い弾力が楽しめるのです。

また、年末は世界的に魚の需要が高まることや、短期間での大量生産に伴う人件費増も、価格が上がる要因となっています。
したがって、板わさで食べるなら「高級品」、お雑煮に入れるなら「いつもの」と使い分けるのも賢い方法かもしれません。

🚚 実は「夏」に作られるおせち料理

ところで、蒲鉾のように「鮮度」が重要なものは年末ギリギリに作られますが、おせち料理全体で見ると、少し事情が異なります。

実際のところ、多くの食材は「夏から秋」にかけてフル稼働で作られています。

もちろん、年末の数日だけで日本中の需要を満たす量を作ることは物理的に不可能です。
そのため、メーカー様は夏頃から少しずつ製造し、鮮度を保ったまま凍結して、出番が来るその日まで「冷凍倉庫」で大切に保管しているのです。

つまり、私たち物流会社にとって、この仕組みはまさに「時を調整する仕事」と言えます。
数ヶ月間、マイナス20℃の世界でじっと眠っていた商品たちが、12月に入ると一斉に目覚め、トラックに乗って全国のスーパーやデパートへと旅立っていきます。

正直に申し上げますと、国民の皆様が一斉に同じ行動をするこの時期、物流現場は目が回るような忙しさになります(笑)。
それでも、この「出荷ラッシュ」を乗り越えなければ、日本の伝統あるお正月はやってきません。

皆様がこたつでゆっくりくつろいでいる時も、私たちの冷蔵庫は24時間体制で稼働し、大切な貨物の品質を守り続けています。

本年も、日新の食品物流をご利用いただき、
誠にありがとうございました。

2026年も、皆様の「食」と「笑顔」を、
物流の力で支えてまいります。

どうぞ良いお年をお迎えください。

株式会社 日新
食品物流営業部